構造と作動

Ignition System 全般

構 造

  1. Igniter 一体型イグニッションコイル
    1. 各気筒ごとに独立して配置したことにより,ディストリビューター・ハイテンションコードを不要とし,高電圧部分の損失低減,信頼性の確保および電波雑音の低減をはかりました。
    2. 小型・軽量なイグナイターを内蔵しており, Engine コントロールコンピューターからの信号により2次コイル側に高電圧が誘起されます。

  2. クランクポジションセンサー(Ne信号)
    1. 検出精度の高い電磁ピックアップ式センサーを採用しました。クランク位置およびクランク角速度の検出を行います。
    2. クランクシャフトに取り付けられたクランクシャフトタイミングローターには,上死点検出用に2歯欠歯した34歯の信号歯が設けてあります。クランクポジションセンサーは,10°ごとのクランク回転信号を検出するとともに欠歯した箇所をもとに,正確な上死点を検出することができます。クランクシャフトが回転することにより,タイミングローター突起部とクランクポジションセンサーのエアギャップが変化するためクランクポジションセンサーのコイル部を通過する磁束が増減し,コイル部に起電力が発生します。この発生電圧は,タイミングローター突起部がクランクポジションセンサーに近づく時と離れる時とでは逆向きになるため,交流電力として現れます。

  3. カムポジションセンサー(G2信号)
    1. 検出精度の高い電磁ピックアップ式センサーを採用しました。気筒判別および実カムシャフト角度の検出を行います。
    2. シリンダーヘッド左側面に取り付けられており,インテークカムシャフトに固定された,カムシャフトタイミングローター(360-180-180°CA)の突起をカムポジションセンサーが検出します。クランクポジションセンサーと同方式のセンサーを採用し,交流電力として検出します。

作 動

  1. 点火時期制御(ESA)
    1. 各センサーからの信号により最適な点火時期を選出し,イグナイターに点火信号(IGt)を送ります。点火時期は,初期セット点火時期または基本進角度と補正進角度により決定されます。
      1. 初期セット点火時期
        1. Engine 始動時はBTDC5°に固定します。また,サービス用端子を短絡,かつスロットルOFF時にはBTDC10°に固定します。
      2. 基本進角度
        1. エアフローメーターおよびNe信号をもとに Engine コントロールコンピューターの基準値(マップ)から最適な点火時期を選び出します。
      3. 補正進角度
        1. 各センサーからの信号をもとに,運転状態に最適な点火時期になるよう補正します。
        2. 補正項目
          暖気進角特性
          冷却水温が低いときは運転状態に応じて点火時期を進角し,運転性を向上します。
          アイドル安定化進角特性
          アイドル回転数が低くなると点火時期を進角し,アイドル回転数の安定化をはかります。また,回転数が高い場合は遅角します。
          過渡補正遅角
          水温50℃以上の急加速時に点火時期を遅角させ,ノッキングを防止します。
          フューエルカット復帰時遅角
          フューエルカット復帰時に,点火時期を遅角させてショックを軽減します。
          ECT変速時遅角
          A/Tの変速時に点火時期を遅角させて変速ショックの低減をはかります。
          加速時遅角
          加速時に一時的に点火時期を遅角することにより,運転性の向上をはかります。
          ノック補正遅角
          ノックセンサーからの信号により点火時期を補正します。
      4. ノック Control system (KCS)
        1. ノッキングを検出するとノッキングの大小によってノッキングが発生しなくなるまで一定角度ずつ遅角させます。
        2. ノッキングが発生しなくなると一定角度ずつ進角します。この時にノッキングが再発した場合は再度遅角します。
      5. 最大・最小進角特性
        1. 点火時期が異常に進角または遅角すると Engine に悪影響を与えるため,最大および最小進角度を決めています。
        2. 最大・最小進角度
          最大進角度   (BTDC)
          54°
          最小進角度   (ATDC)
          10°

  2. 点火時期の算出
    1. Ne・G2信号,吸気温信号,スロットルバルブ開度信号,水温信号などをもとに Engine コントロールコンピューターが運転状態に応じた点火時期を算出し,イグナイター一体型イグニッションコイルへ点火信号を送ります。

スパークプラグ